公開日:2026.02.17 更新日:2026.02.17

エストラジオール(e2)は女性の健康状態を測る重要な指標ですが、その基準値は月経周期や年齢によって大きく変動します。
そのため、ご自身の検査結果を正しく理解するには、ライフステージに合わせた基準値を知ることが不可欠です。
この記事では、年齢別、月経周期別のエストラジオールの基準値に加え、数値が不妊治療や更年期にどのように関わるのかを解説します。
検査結果の数値が意味するところを理解し、適切な健康管理に役立ててください。
そもそもエストラジオール(E2)とは?女性の体に不可欠なホルモン
エストラジオールとは、卵巣で主に作られる女性ホルモン(エストロゲン)の一種で、女性の心身の健康に深く関わる物質です。
このホルモンの主な役割は、子宮内膜を厚くして妊娠の準備を整えたり、乳房の発達や丸みを帯びた体つきといった女性らしい身体적特徴を促したりすることです。
また、自律神経や感情のコントロール、骨密度の維持、皮膚の潤いを保つなど、その働きは多岐にわたります。
男性も副腎や精巣でごく微量のエストラジオールを持っており、主にテストステロンから作られます。
【一覧表】エストラジオールの基準値|月経周期・ライフステージ別
エストラジオールの数値は、採血による血液検査で測定されます。
この数値は常に一定ではなく、月経周期の中でダイナミックに変動するのが特徴です。
また、妊娠中や閉経後といったライフステージによっても基準となる平均値は大きく異なります。
検査結果を正しく評価するためには、血清中のエストラジオール濃度を、採血した時期がどの段階にあたるかと照らし合わせて判断する必要があります。
以下に、それぞれの時期における基準値の目安を示します。
卵胞期の基準値
卵胞期は月経が始まってから排卵までの期間を指し、卵胞が成熟するにつれてエストラジオールの分泌量が徐々に増加します。
この時期の初期における基準値は、検査機関によって多少の差がありますが、一般的に20〜60pg/mL前後が目安とされます。
例えば、ある施設では基準範囲を33〜49pg/mLとし、別の施設では43〜58pg/mLと設定している場合があります。
月経3日目頃の数値は卵巣の基本的な機能(基礎値)を評価する指標となり、47pg/mLや60pg/mLといった数値を参考にしつつ、他のホルモン値と合わせて判断されます。
排卵期の基準値
排卵期には、成熟した卵胞から大量のエストラジオールが分泌され、数値はピークに達します。この急激なホルモンの上昇が脳下垂体を刺激し、排卵を促す黄体形成ホルモン(LH)の大量放出(LHサージ)を引き起こします。排卵直前のエストラジオールの基準値は個人差が大きいものの、一般的に120~526pg/mL程度まで上昇するとされています。このピーク値を確認することで、卵胞が十分に成熟し、排卵の準備が整っているかを判断する重要な指標となります。
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黄体期の基準値
黄体期は排卵後から次の月経が始まるまでの期間です。
排卵後に一度減少したエストラジオールの数値は、黄体から再び分泌されることで再度上昇します。
この時期のエストラジオールは、プロゲステロンと共に、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚く維持する役割を担います。
黄体期の基準値は卵胞期よりも高く、概ね70〜250pg/mLの範囲で推移します。
検査機関によっては62pg/mL、75pg/mL、80pg/mL、81pg/mL、90pg/mLといった数値を基準範囲の参考値としており、妊娠が成立しない場合は数値が低下し月経が始まります。
閉経後の基準値
閉経後は、卵巣機能が停止するため、エストラジオールの分泌量は大幅に減少し、非常に低い値で安定します。
一般的に、閉経後の基準値は20pg/mL未満とされることが多く、多くの場合は検出限界に近い数値となります。
このエストラジオールの急激な減少が、ほてりや発汗、気分の落ち込みといった更年期症状の主な原因となります。
また、骨密度を維持する働きも弱まるため、骨粗しょう症のリスクが高まります。
閉経後の健康管理において、このホルモンの状態を把握することは重要です。
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【年齢別】エストラジオール(E2)の基準値の目安
エストラジオールの分泌量は、月経周期だけでなく、年齢によっても大きく変化します。
思春期に分泌が始まり、20代から30代の性成熟期にピークを迎え、40代以降は徐々に減少し、閉経後はごくわずかになります。
このように、一生を通じてホルモンレベルは変動するため、自身の年齢がどのステージにあるかを理解することが、検査結果を解釈する上で役立ちます。
ここでは、年代ごとのエストラジオール数値の一般的な傾向と目安について解説します。
20代の基準値の目安
20代は、エストラジオールの分泌が最も活発になる性成熟期のピークにあたります。
この年代では、一般的に月経周期が安定しており、ホルモンバランスも整っているため、妊娠に適した身体の状態が維持されています。
具体的な数値の目安としては、前述した月経周期ごとの基準値(卵胞期、排卵期、黄体期)がそのまま当てはまります。
卵巣機能が最も高い状態にあるため、周期に伴ってホルモン値はダイナミックに変動し、健康な女性であればこれらの基準範囲内で推移することが一般的です。
30代の基準値の目安
30代も20代と同様に性成熟期にあたり、エストラジオールの分泌は活発な状態が続きます。
しかし、30代後半になると、個人差はありますが徐々に卵巣機能が低下し始め、エストラジオールの分泌量も緩やかに減少傾向を示すことがあります。
基本的な基準値の目安は月経周期に応じたものと変わりませんが、妊活や不妊治療を始める人が増える年代でもあり、自身のホルモン値を正確に把握しておくことの重要性が増します。
定期的な婦人科検診で、ホルモンバランスの変化を確認することが推奨されます。
40代の基準値の目安
40代は、更年期への移行期(プレ更年期)にあたり、卵巣機能が大きく低下し始める年代です。
特に45歳を過ぎる頃から、エストラジオールの分泌量は減少し、数値のばらつきが大きくなります。
月経周期が不規則になったり、周期が短くなったり長くなったりといった変化が見られやすくなります。
数値が低い月もあれば、一時的に高く変動することもあり、ホルモンバランスが不安定な状態となります。
この時期の数値低下は、更年期症状の始まりや、閉経が近づいているサインである可能性があります。
50代以降の基準値の目安
50代になると、多くの女性が閉経を迎えます。
日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後とされており、閉経に伴って卵巣からのエストラジオール分泌はほぼ停止します。
そのため、50代以降のエストラジオールの数値は、閉経後の基準値である20pg/mL未満となり、低値で安定します。
このホルモン環境の変化は、更年期症状の本格化や、骨粗しょう症、脂質異常症といった閉経後にかかりやすい疾患のリスクを高める要因となるため、適切な健康管理や必要に応じた治療が検討されます。
エストラジオールの数値が基準値より低い場合に考えられる3つのこと
血液検査でエストラジオールの数値が基準値よりも低い場合、それは卵巣機能が低下しているサインである可能性があります。
この低値の状態は、不妊や月経不順の原因となるだけでなく、更年期や閉経が近いことを示唆している場合もあります。
また、年齢に関わらず、過度なダイエットや強いストレスといった生活習慣がホルモンバランスを崩し、数値を低下させることもあります。
ここでは、エストラジオールが低い場合に考えられる主な要因を3つに分けて解説します。
不妊治療や妊活への影響
妊活中や不妊治療において、エストラジオールの数値が低いことは、卵胞の発育が不十分であることを示唆します。
特に卵胞期初期の数値が極端に低い場合、卵巣の反応性が悪く、良質な卵子が育ちにくい状態が考えられます。
また、排卵期に向けて数値が十分に上昇しないと、子宮内膜が厚くならず、受精卵が着床しにくい原因にもなります。
無排卵月経や月経不順を引き起こすこともあり、妊娠の妨げとなるため、ホルモン補充療法などの治療が必要になる場合があります。
更年期症状や閉経の可能性
40代以降でエストラジオールの数値が持続的に低い場合、卵巣機能が低下し、閉経が近づいている可能性が高いと考えられます。
エストラジオールは女性の心身の健康を支える重要なホルモンであり、その分泌量が減少すると、ほてり、のぼせ、イライラ、不眠、関節痛といったさまざまな更年期症状が現れやすくなります。
特に、エストラジオールが低値であると同時に、脳から卵巣を刺激するFSH(卵胞刺激ホルモン)の数値が高くなっている場合、更年期や閉経の状態にあると判断されることが一般的です。
過度なダイエットやストレスによる卵巣機能の低下
急激な体重減少を伴う過度なダイエットや、強い精神的ストレスは、年齢に関わらず卵巣機能に悪影響を及ぼすことがあります。
これらは脳の視床下部や下垂体の働きを乱し、ホルモン分泌の指令が正常に伝わらなくなる原因となります。
その結果、卵巣からのエストラジオール分泌が抑制され、無月経や月経不順を引き起こします。
これは「体重減少性無月経」や「視床下部性無月経」と呼ばれ、まずは原因となっている生活習慣を見直し、体重を回復させたり、ストレスを軽減させたりすることが治療の第一歩となります。
エストラジオールの数値が基準値より高い場合に考えられる原因
エストラジオールの数値が、排卵期や妊娠中でもないのに基準値より高い(異常高値)場合、その背景にはいくつかの原因が考えられます。
一つは、不妊治療における排卵誘発剤の影響です。
もう一つは、ホルモンを産生するタイプの卵巣腫瘍や、子宮内膜症といった婦人科系の疾患の可能性です。
持続的に高い数値が見られる場合は、原因を特定するために追加の検査が必要となることがあります。
ここでは、エストラジオールが高い場合に考えられる主な原因について解説します。
不妊治療中の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク
不妊治療で排卵誘発剤を使用すると、卵巣が過剰に刺激され、一度に多くの卵胞が発育することがあります。
その結果、各卵胞からエストラジオールが大量に分泌され、血中濃度が異常な高値を示すことがあります。
この状態は、卵巣が腫れ、腹水や胸水が溜まるなどの症状を引き起こす「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」の発症リスクを高めるサインです。
重症化すると血栓症などを引き起こす危険性もあるため、治療中はエストラジオールの数値を慎重にモニタリングし、必要に応じて治療計画を調整します。
卵巣機能の腫瘍や疾患の可能性
月経周期と無関係にエストラジオールの数値が持続的に高い場合、エストラジオールを産生するタイプの卵巣腫瘍(顆粒膜細胞腫など)が原因である可能性が考えられます。
これらの腫瘍はホルモンを過剰に分泌するため、不正出血や月経異常などの症状を引き引起こすことがあります。
排卵出血はいつ?不正出血との見分け方と妊活のタイミングを解説
また、子宮内膜症や子宮筋腫といったエストロゲン依存性の疾患がある場合にも、数値が高くなる傾向が見られます。
超音波検査やMRIなどの画像診断と合わせて、総合的に原因を特定していく必要があります。
エストラジオールとFSHの数値からわかること
エストラジオール(E2)の数値を評価する際、卵胞刺激ホルモン(FSH)の値を合わせて確認することが極めて重要です。
この二つのホルモンは、脳下垂体と卵巣の間で互いに分泌量を調整し合う「フィードバック」という関係にあります。
卵巣機能が低下してE2の分泌が減ると、脳はそれを補おうとしてFSHの分泌を増やします。
そのため、「E2が低く、FSHが高い」という組み合わせは、卵巣機能の低下や閉経が近いことを強く示唆する所見となります。
エストラジオール(E2)に関するよくある質問
エストラジオールの検査結果について、多くの方がさまざまな疑問を抱きます。
特に、数値が不妊治療や更年期の診断、日々の生活にどう関わるのかといった質問がよく寄せられます。
ここでは、そうしたエストラジオールに関するよくある質問を取り上げ、それぞれの疑問に対して簡潔に回答します。
ご自身の状態を理解し、今後の健康管理や治療方針を考える上での参考にしてください。
Q1.不妊治療でE2の数値はどのくらいが目安になりますか?
不妊治療におけるE2の目安は治療段階で異なります。
月経3日目頃の基礎値は50pg/mL以下が望ましいとされます。
排卵誘発周期では、成熟卵胞1個あたり200〜300pg/mLへの上昇が目標です。
ただし、最適な数値は治療方針や個人の反応によるため、必ず担当医の指示に従ってください。
Q2.E2が低いと更年期障害が始まりますか?
E2の低下は更年期障害の主な原因ですが、数値が低いことと症状の有無は必ずしも一致しません。
一般的にE2が20pg/mLを下回ると症状が出やすいですが、個人差が大きいためです。
数値だけでなく、FSHの値やほてりなどの自覚症状と合わせて総合的に判断されます。
Q3.食事や生活習慣でエストラジオールの数値を改善できますか?
食事や生活習慣の見直しはホルモンバランスの安定に寄与しますが、数値自体を直接的に大きく改善するのは困難です。
大豆イソフラボンを適度に摂取し、質の良い睡眠、適度な運動、ストレス管理を心がけることが、間接的に卵巣機能の健康をサポートすることにつながります。
まとめ
エストラジオールの基準値は、月経周期、年齢、妊娠、閉経といった個人のライフステージに応じて大きく変動します。
そのため、血液検査で得られた数値を評価する際は、これらの背景を考慮に入れる必要があります。
また、エストラジオールの値単独で判断するのではなく、FSHをはじめとする他のホルモン値や、現在の自覚症状などを踏まえて、専門医が総合的に診断します。
検査結果の数値に関して不安や疑問がある場合は、自己判断せず、かかりつけの医療機関に相談することが求められます。
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