公開日:2026.03.27 更新日:2026.03.27

40代を過ぎてから、立ち上がりや歩き始めに股関節の痛みを感じることはありませんか。
そのつらい疼痛は、鍼灸院で行われる鍼治療によって改善する可能性があります。
薬や湿布でなかなか良くならない股関節の痛みに対して、鍼がどのように作用するのか、その原因と効果を解説します。
そのつらい股関節痛、鍼治療で改善できるかもしれません
「歩き出す一歩目が痛い」「階段の上り下りがつらい」「長時間座った後、立ち上がる時に激痛が走る」といった股関節の悩みは、日常生活の質を大きく低下させます。
湿布や痛み止めで一時的にしのいでいるものの、根本的な解決に至らないケースは少なくありません。
このような状況において、筋肉や神経に直接アプローチできる鍼治療が有効な選択肢となります。
特に歩行時の痛みが強い方にとって、痛みの緩和が期待できます。
歩き始めや立ち上がりの痛みを放置していませんか?
股関節の痛みは、初期段階では安静にしていると治まるため、つい放置されがちです。
しかし、歩き始めや立ち上がりといった動作開始時の痛みを放置すると、症状は徐々に進行します。
痛みをかばうことで歩き方が不自然になり、膝や腰など他の部位にまで負担がかかることもあります。
日常生活に支障をきたすだけでなく、ランナーのようにスポーツを楽しむ方のパフォーマンス低下にも直結するため、早めの対処が重要です。
整形外科の治療で改善しなかった方へ
整形外科でレントゲン検査を受け、「骨に異常はない」と言われたり、痛み止めや湿布、リハビリを続けても症状が改善しなかったりする方は多いかもしれません。
整形外科の治療は骨や軟骨の異常を中心に見ることが多いですが、股関節痛の原因は筋肉の硬さや血行不良にあることも少なくありません。
鍼治療は、そのような筋肉や血流の問題に直接アプローチできるため、西洋医学的な治療とは異なる観点から症状の改善を目指せます。
40代から要注意!股関節痛を引き起こす主な原因
40代以降になると、長年の生活習慣の蓄積や加齢による筋力の低下などから、股関節に不調が出やすくなります。
痛みの背景には、単なる使いすぎだけでなく、股関節周辺の筋肉や骨盤の状態が大きく関わっています。
ここでは、股関節痛を引き起こす主な原因について解説します。
股関節周りの筋肉の硬さが痛みを引き起こす
股関節は、お尻にある殿筋群や足の付け根にある腸腰筋など、多くの筋肉によって支えられています。
デスクワークでの長時間の座位姿勢や、逆に立ち仕事での負担の蓄積により、これらの筋肉が硬く緊張した状態になると、血行不良を引き起こします。
血流が悪くなった筋肉は酸欠状態に陥り、痛みを引き起こす物質を発生させます。
この筋肉の硬さが、股関節の動きを悪くし、動かした際の痛みの直接的な原因となります。
骨盤の歪みが股関節への負担を増やす
足を組む癖や片足に重心をかけて立つ習慣があると、骨盤が歪む原因となります。
骨盤が歪むと、左右の脚の長さが微妙に異なったり、体重のかかり方がアンバランスになったりします。
その結果、片方の股関節に過剰な負荷がかかり続けることになり、関節や周辺の筋肉に炎症や痛みを引き起こします。
骨盤の歪みは股関節痛の根本的な原因の一つであり、この歪みを整えない限り、痛みは再発しやすくなります。
なぜ鍼は股関節の痛みに効果的なのか?3つの作用を解説
鍼治療が股関節の痛みに有効なのは、主に3つの作用によるものです。
鍼は痛みの出ている表面的な部分だけでなく、その根本原因となっている身体の深部へ直接アプローチできるのが大きな特徴です。
ここでは、鍼が股関節痛を緩和するメカニズムを具体的に解説します。
作用1:硬くなった筋肉の緊張を和らげる
股関節痛の多くは、お尻や太ももの付け根にある筋肉が硬く緊張することが原因です。
鍼をこれらの硬くなった筋肉(トリガーポイント)に直接刺入すると、筋肉の繊維が微細に傷つきます。
その傷を修復しようとする過程で、その部位の血流が促進され、筋肉の緊張が緩みます。
これにより、筋肉の硬さによって引き起こされていた痛みが軽減し、股関節の可動域が改善します。
作用2:血流を促進して痛みの原因物質を排出する
筋肉が硬くなると、その部分の血管が圧迫されて血行が悪化します。
血行不良になると、筋肉内に乳酸やブラジキニンといった痛みの原因となる物質や疲労物質が蓄積します。
鍼の刺激は、血管を拡張させる作用を持つ物質の放出を促し、局所の血流を改善させます。
血流が良くなることで、溜まっていた痛みの原因物質が血液中に流れ出し、体外へ排出されやすくなるため、痛みが和らぎます。
作用3:痛みを脳に伝達する神経の働きを抑制する
鍼の刺激は、痛みの感覚を脳に伝える神経の働きをブロックする効果があります。
鍼を刺した刺激が、痛みの信号よりも太い神経線維を通って脳に伝わることで、痛みの伝達経路が抑制されると考えられています。
また、鍼刺激は脳内でβ-エンドルフィンやエンケファリンといった、モルヒネ様の鎮痛作用を持つ神経伝達物質の分泌を促進します。
これにより、体自身が持つ鎮痛システムが働き、痛みを緩和させます。
股関節痛に対する鍼治療の具体的な流れを4ステップで紹介
実際に鍼灸院で股関節痛の治療を受ける際、どのような流れで進められるのか、不安に思う方もいるかもしれません。
ここでは、初回の来院から施術後の説明までの一般的な流れを4つのステップに分けて紹介します。
安心して施術を受けられるよう、全体の流れを把握しておきましょう。
ステップ1:丁寧なカウンセリングで痛みの原因を特定
まず、問診票に現在の症状や既往歴などを記入します。
その後、施術者が直接話を聞き取り、痛みがいつから始まったのか、どのような動作で痛むのか、生活習慣や仕事内容などを詳しく尋ねます。
このカウンセリングを通じて、痛みの表面的な症状だけでなく、その背景にある根本的な原因を探っていきます。
不安な点や疑問点は、この段階で遠慮なく質問することが大切です。
ステップ2:股関節の動きや歪みを検査
カウンセリングで得た情報を基に、身体の状態を詳しく調べます。
実際に股関節を曲げたり伸ばしたり回したりしてもらい、どの動きで痛みが出るか、可動域はどのくらいかを評価します。
また、立った姿勢や座った姿勢で骨盤の高さや傾き、背骨の歪みなどを視診・触診で確認します。
院によっては、エコーを用いて筋肉や靭帯の状態を画像で確認し、より正確な原因特定に役立てることもあります。
ステップ3:痛みの根本原因へ鍼でアプローチ
カウンセリングと検査の結果から特定した、痛みの根本原因となっている筋肉や経穴(ツボ)に対して鍼施術を行います。
股関節痛の場合、お尻の中殿筋や梨状筋、太ももの付け根にある腸腰筋などが主なターゲットとなります。
使用する鍼は髪の毛ほどの細さで、使い捨てのものを使用するため衛生的です。
必要に応じて、鍼に微弱な電気を流して筋肉の緊張を効率的に緩める施術を行うこともあります。
ステップ4:施術後の状態確認と今後の計画を説明
施術が終わったら、再度股関節の動きを確認し、施術前と比較して痛みがどのように変化したか、可動域がどれくらい改善したかを評価します。
その上で、現在の身体の状態を改めて説明し、今後の最適な治療計画を提案します。
どのくらいの頻度で通院すれば良いか、日常生活で気をつけるべき点、自宅でできる簡単なストレッチなどのセルフケアについてもアドバイスします。
鍼を刺すのはどこ?痛みの原因に直接アプローチする施術部位
股関節が痛いからといって、必ずしも股関節の真横に鍼を刺すわけではありません。
痛みを感じる場所と、その痛みを引き起こしている原因の場所は異なることが多いため、カウンセリングと検査に基づいて最も効果的な部位を選んで施術します。
ここでは、股関節痛の治療で主に使用される施術部位について解説します。
主にお尻や太ももの付け根の筋肉を狙います
股関節の痛みは、関節を支え、動かしている周囲の筋肉の過緊張が原因であることが大半です。
特に、歩行時の安定性に関わるお尻の筋肉(中殿筋、小殿筋、梨状筋など)や、足を上げる動作に使う太ももの付け根の深層にある筋肉(腸腰筋)は、硬くなりやすい部位です。
これらの筋肉の硬さが痛みの引き金(トリガーポイント)となっている場合が多いため、施術の主要なターゲットとなります。
症状に応じて腰や足にも施術することがあります
股関節の動きは、骨盤を介して腰や、膝関節を介して足とも連動しています。
そのため、股関節の痛みの原因が、実は腰の筋肉の緊張や、太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋)の張りから来ていることもあります。
痛みをかばうことで他の部位に負担がかかっているケースも少なくありません。
症状や身体のバランスを全体的に見て、痛みの根本改善のために腰部や下腿部の筋肉、関連する経穴(ツボ)にも鍼施術を行うことがあります。
鍼治療の痛みはどのくらい?施術後の注意点について
鍼治療を受けるにあたって、「鍼は痛いのではないか」「施術後に何か影響はないのか」といった不安を感じる方は少なくありません。
ここでは、鍼治療に伴う痛みの程度や、施術後に起こりうること、その際の注意点について説明します。
事前に知っておくことで、安心して施術に臨むことができます。
髪の毛ほどの細い鍼なので強い痛みは感じにくい
鍼治療で使用する鍼は、直径が0.16mm〜0.20mm程度と、髪の毛ほどの非常に細いものです。
そのため、注射針を刺す時のような鋭い痛みを感じることはほとんどありません。
鍼が皮膚を通過する際にチクッと感じることがある程度で、筋肉の硬い部分に当たると「ズーン」と重く響くような独特の感覚が生じることがあります。
これは鍼が的確に作用している証拠であり、痛みに弱い方には刺激量を調整することも可能です。
施術後に起こりうる「だるさ」は好転反応のサイン
施術後、一時的に身体がだるくなったり、眠気を感じたり、症状があった部分が重く感じられたりすることがあります。
これは「好転反応(瞑眩)」と呼ばれるもので、鍼の刺激によって血行が急激に良くなり、身体が正常な状態に戻ろうとする過程で起こる自然な反応です。
通常は半日〜1日程度で治まりますが、この間は激しい運動や飲酒を避け、水分を多めに摂ってゆっくりと過ごすことが推奨されます。
改善までに必要な通院回数と期間の目安
股関節痛の鍼治療を始めるにあたり、どのくらいの期間通えば良いのかは気になる点です。
症状の程度や痛みの原因、生活習慣、年齢などによって個人差があるため一概には言えませんが、一般的な通院頻度と期間の目安について解説します。
治療計画を立てる際の参考にしてください。
初期は週1〜2回、症状が安定すれば間隔を空けていきます
痛みが強く、日常生活に支障が出ているような治療初期の段階では、施術効果を定着させるために週に1〜2回のペースで集中的に通院することが理想的です。
施術を重ねて痛みが軽減し、症状が安定してきたら、週に1回、2週間に1回、月に1回というように、身体の状態に合わせて徐々に通院間隔を空けていきます。
最終的には、良い状態を維持するためのメンテナンスとして定期的に通院する形に移行します。
多くの場合、3ヶ月程度の継続で効果を実感できます
股関節痛の治療において、変化を感じ始めるまでの期間や、症状の安定、痛みの再発防止といった明確な効果を実感できるまでの期間には個人差があります。継続的な治療が重要であり、効果には個人差があることをご理解ください。
変形性股関節症と診断された方でも鍼治療は受けられます
整形外科で「変形性股関節症」と診断され、手術を勧められている場合でも、鍼治療を受けることは可能です。
鍼治療によってすり減った軟骨が再生したり、骨の変形が元に戻ったりすることはありません。
しかし、変形性股関節症の痛みの多くは、関節の変形そのものよりも、関節を支える周囲の筋肉の過度な緊張や血行不良が原因で生じています。
鍼治療でこれらの筋肉の緊張を和らげ、血流を改善することで、痛みを大幅に緩和し、日常生活の動作を楽にすることは十分に期待できます。
股関節痛の鍼治療に関するよくある質問
股関節痛で鍼治療を検討している方から、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1.鍼治療に健康保険は適用されますか?
原則として鍼治療は自費診療です。
ただし、神経痛やリウマチ、腰痛症など特定の疾患について、医師が鍼治療の必要性を認めて同意書を発行した場合に限り、健康保険が適用されることがあります。
股関節痛がこれらの疾患に起因すると診断されれば適用対象となる可能性はありますが、手続きが必要なため、まずは通院を検討している治療院にご相談ください。
Q2.施術当日はお風呂に入っても大丈夫ですか?
長時間の入浴や熱いお湯に浸かることは避けてください。
施術後は血行が促進されているため、身体が温まりすぎるとのぼせたり、だるさが増したりする可能性があります。
施術当日はシャワーで済ませるか、ぬるめのお湯に短時間浸かる程度に留めておくのが望ましいです。
施術直後の飲酒や激しい運動も同様の理由から控える必要があります。
Q3.整形外科での治療と併用することは可能ですか?
はい、併用は全く問題ありません。
整形外科で行われる薬物療法やリハビリテーションと、鍼治療を組み合わせることで、異なる側面から痛みにアプローチできます。
整形外科での診断内容を鍼灸師に伝えることで、より安全で効果的な施術計画を立てることが可能です。
両方の治療を並行して行うことで、相乗効果が期待できる場合も多くあります。
まとめ
40代以降に起こりやすい股関節痛は、股関節周りの筋肉の硬さや骨盤の歪みが主な原因です。
鍼治療は、これらの筋肉の緊張を直接的に和らげ、血流を促進することで痛みを緩和します。
また、痛みの信号を脳に伝えにくくする作用も期待できます。
整形外科での治療で改善が見られなかった場合でも、鍼治療は有効な選択肢となり得ます。
痛みを放置せず、専門家による適切なアプローチでつらい症状の改善を目指しましょう。















