公開日:2025.12.27 更新日:2025.12.27

妊娠中期は「安定期」と呼ばれ、つわりが落ち着き過ごしやすくなる妊婦が多い時期です。
しかし、中には胃痛に悩まされる方も少なくありません。
この記事では、妊娠中期に起こる胃痛の主な原因から、薬を使わないセルフケアによる対処法、そして病院を受診すべき危険なサインまでを詳しく解説します。
原因を知り、適切な対処法を実践することで、不安を和らげることができます。
なぜ?安定期のはずの妊娠中期に胃痛が起こる主な理由
つわりが治まる安定期に入ったにもかかわらず、胃痛やみぞおちの痛みに悩まされることがあります。
これは、つわりとは異なる原因で引き起こされる症状です。
妊娠中期になると、お腹の赤ちゃんが成長し子宮が大きくなることで、胃が物理的に圧迫されます。
また、妊娠中に分泌が増えるホルモンの影響で消化機能が低下することも、胃痛の大きな要因です。
これらの変化は妊娠に伴う生理的なものであり、多くの妊婦が経験します。
妊娠中期に特有の胃痛を引き起こす3つの原因
妊娠中期の胃痛には、この時期ならではの特有の原因がいくつか考えられます。
キリキリとした痛み、重苦しい胃もたれ、胸が焼けるような感覚など、症状の現れ方はさまざまです。
主な原因として、「大きくなった子宮による胃の圧迫」「ホルモンバランスの変化による消化機能の低下」「胃酸の食道への逆流」の3つが挙げられます。
これらの原因が単独、あるいは複合的に作用して、不快な胃の症状を引き起こします。
原因①:大きくなった子宮が胃を物理的に圧迫する
妊娠中期になると、胎児の成長に伴って子宮が急速に大きくなり、みぞおちのあたりまでせり上がってきます。
この大きくなった子宮が胃を直接押し上げるため、胃が圧迫されて本来の大きさに膨らむことができなくなります。その結果、食事の量が少なくても満腹感を感じたり、胃が重く感じられたり、痛みとして現れることがあります。特に食後は、食べたもので胃が膨らむため、圧迫感が強まりやすいです。お腹の張りと同時に胃の不快感を感じることもあります。
原因②:ホルモンバランスの変化で消化機能が低下する
妊娠中はプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの分泌が増加します。
このホルモンには、子宮の筋肉を緩めて妊娠を維持する働きがありますが、同時に胃腸の筋肉(平滑筋)の働きも緩めてしまう作用があります。
これにより、胃のぜん動運動が弱まり、食べたものが胃の中に長く留まることで消化不良を起こしやすくなります。
結果として、胃もたれや胃痛、便秘といった症状につながります。
仕事や家庭環境によるストレスも、自律神経のバランスを乱し、消化機能をさらに低下させる一因となります。
原因③:胃酸が食道へ逆流して胸やけのような痛みが起こる
プロゲステロンの影響は、胃と食道をつなぐ「下部食道括約筋」という筋肉にも及びます。
この筋肉が緩むと、胃の内容物や胃酸が食道へ逆流しやすくなります。
加えて、大きくなった子宮が胃を圧迫することも、胃酸の逆流を助長します。
逆流した強い酸性の胃酸が食道の粘膜を刺激することで、胸やけや、胸のあたりが焼けるような痛み(呑酸)を引き起こします。
この症状は、食後や横になったときに特に現れやすいのが特徴です。
薬に頼らない!妊娠中でもできる胃痛のセルフケア方法
妊娠中の胃痛は辛いものですが、薬の服用には慎重になりたいものです。
幸い、日常生活の工夫によって症状を改善できる対処法がいくつかあります。
食事の摂り方や内容を見直したり、姿勢を意識したりすることで、胃への負担を軽減することが可能です。
ここでは、妊娠中でも安心して実践できる胃痛のセルフケア方法を紹介します。
自分に合った方法を見つけて、不快な症状を和らげましょう。
胃への負担を減らす食事のポイント(1回の量を減らし回数を増やす)
一度に多くの食事を摂ると、圧迫されている胃に大きな負担がかかり、胃痛や胃もたれの原因となります。
これを避けるためには、1回の食事の量を減らし、その分食事の回数を1日5~6回に増やす「分割食」が効果的です。
この方法により、食べ過ぎを防ぎながら、胃が空になる時間を短くすることができます。
長時間の空腹は、胃酸の濃度を高めて胃の粘膜を刺激することがあるため、適度に何かを口にすることも大切です。
少量ずつ、ゆっくりよく噛んで食べることを心がけましょう。
消化しやすく胃に優しい食べ物を選ぶ
胃の調子が悪いときは、消化しやすい食べ物を選んで胃を休ませることが重要です。
具体的には、おかゆやよく煮込んだうどん、豆腐、茶碗蒸しなどがおすすめです。
タンパク質を摂るなら、脂肪分の少ない白身魚や鶏のささみ、卵などが良いでしょう。
野菜は、大根やかぶ、かぼちゃ、じゃがいもなどを、煮たり蒸したりして柔らかく調理すると消化しやすくなります。
果物では、バナナやりんごなどが比較的胃に優しいとされています。
胃の負担を減らすため、調理法も揚げるよりは煮る、蒸すといった方法を選びましょう。
避けるべき!胃痛を悪化させやすい食べ物・飲み物
胃痛があるときには、症状を悪化させる可能性のある食べ物や飲み物は避けるのが賢明です。
例えば、唐揚げや天ぷらなどの脂っこい料理、香辛料を多く使った刺激の強い食べ物は、消化に時間がかかったり胃酸の分泌を促したりします。
また、レモンやオレンジなどの柑橘類、酢の物といった酸味の強い食品も胃を刺激することがあります。
飲み物では、炭酸飲料やコーヒー、紅茶などカフェインを多く含むものも胃酸の分泌を増やすため控えめにしましょう。
全く食べられないわけではありませんが、胃の調子に合わせて調整することが大切です。
食後30分は横にならず、座って過ごす
食事を終えてすぐに横になると、胃の形からして胃酸が食道へ逆流しやすくなり、胸やけや胃痛の原因となります。
胃の中の食べ物が消化され、腸へ送られるのをスムーズにするためにも、食後は上体を起こした姿勢で過ごすことが推奨されます。
最低でも食後30分、できれば1〜2時間は、ソファの背もたれに寄りかかったり、クッションを使ったりして、座ったままリラックスして過ごしましょう。
これにより、重力の助けも借りて、胃酸の逆流を防ぐことができます。
睡眠時は上半身を少し高くして胃酸の逆流を防ぐ
夜間に胸やけや胃痛で眠れない場合は、寝るときの姿勢を工夫することで症状が和らぐことがあります。
就寝中に胃酸が逆流するのを防ぐため、クッションや折りたたんだタオルケットなどを背中から頭の下に入れて、上半身全体が少し高くなるように調整してみましょう。
上半身を高く保つことで、胃酸が食道に上がってくるのを防ぎやすくなります。
また、体の左側を下にして寝る「シムスの体位」は、胃のカーブの関係で胃酸が逆流しにくいとされており、腰痛の緩和にもつながるため試してみる価値があります。
お腹を締め付けないゆったりとした服装を心がける
妊娠中は、体を締め付ける服装を避けることが大切です。
特に腹部を圧迫するようなきつい服やベルトは、大きくなった子宮をさらに圧迫し、胃への物理的な負担を増大させてしまいます。
胃痛や不快感を悪化させないためにも、マタニティ用のワンピースやウエストがゴムになっているボトムスなど、お腹周りを締め付けないゆったりとした服装を選びましょう。
リラックスできる服装は、心身のストレス軽減にもつながります。
また、胃の不快感を和らげる効果が期待できるツボを押す際は、優しく刺激する程度に留めましょう。
こんな症状は要注意!すぐに病院へ相談すべき胃痛のサイン
妊娠中期の胃痛の多くは生理的なものですが、中には注意が必要なケースもあります。
単なる胃痛ではなく、何らかの病気のサインである可能性も否定できません。
特に、いつもと違う強い痛みや、胃痛以外の症状を伴う場合は、自己判断せずに速やかにかかりつけの産婦人科や医療機関に相談することが重要です。
ここでは、ただの胃痛や腹痛とは異なる、受診を急ぐべき危険なサインについて解説します。
我慢できないほどの激しい痛みが続く場合
横になって休んでも痛みが治まらない、冷や汗が出るほど強い、脂汗が出る、動けないほどの激しい痛みなど、これまで経験したことのないような胃痛が続く場合は、危険なサインかもしれません。
妊娠中の生理的な胃痛は、食事や姿勢の工夫で多少和らぐことが多いですが、そうした対処をしても全く改善しない、あるいはどんどん悪化するような場合は注意が必要です。我慢せずに、時間外であってもかかりつけの産婦人科に電話で相談し、指示を仰ぎましょう。
胃痛以外に発熱や下痢、嘔吐を伴う場合
胃痛に加えて、38度以上の発熱や、何度も繰り返す嘔吐、水のような下痢といった症状が見られる場合は、ウイルスや細菌による感染性胃腸炎の可能性があります。
妊娠中は免疫力が低下しているため、食中毒などにもかかりやすくなっています。
つわりによる吐き気とは異なり、急激に症状が現れるのが特徴です。
脱水症状を引き起こす危険性も高いため、水分補給が困難なほど症状が強い場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。
冷や汗が出る、意識がもうろうとする場合
激しい胃痛とともに、冷や汗が止まらない、顔面が蒼白になる、めまいがして意識が遠のくような感覚がある、といった症状は、重篤な状態を示している可能性があります。
これらの症状は、急激な血圧の変動や、内臓の異常など、母体にとって危険な状態のサインかもしれません。
特に、急な血圧の上昇や強い頭痛を伴う場合は、妊娠高血圧症候群の可能性も考えられます。
このような場合は、ためらわずに救急車を呼ぶなど、迅速な対応が求められます。
胃痛とあわせてお腹の張りや出血がある場合
胃のあたりが痛むと感じていても、実際には子宮に関連する痛みである可能性も考慮する必要があります。
胃痛と同時に、お腹がカチカチに硬くなるような規則的な張りや、生理のときのような出血(性器出血)が見られる場合は、切迫早産などの産科的なトラブルが疑われます。
これらの症状は、赤ちゃんにとって危険なサインであるため、すぐに産婦人科に連絡しなければなりません。
痛みの場所が胃なのか子宮なのか判断がつかない場合でも、張りや出血があれば速やかに受診しましょう。
胃痛の裏に隠れている可能性のある病気
妊娠中の胃痛は多くが妊娠に伴う生理的な変化によるものですが、まれに治療が必要な病気が原因となっていることもあります。
自己判断で「妊娠中だから仕方ない」と放置してしまうと、母子ともに危険な状態に陥る可能性も否定できません。
ここでは、妊娠中の胃痛という症状で現れることがある、代表的な病気をいくつか紹介します。
いつもと違うと感じたら、これらの病気の可能性も念頭に置くことが大切です。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌が原因で起こる胃腸の感染症です。
主な症状は、突然の嘔吐、下痢、腹痛、発熱で、胃のキリキリとした痛みを伴うこともあります。
妊娠中は免疫力が低下しているため感染しやすく、脱水症状にも陥りやすいため注意が必要です。
特に、冬場に流行するノロウイルスや、生肉などから感染するカンピロバクターなどが原因となることが多いです。
自己判断で市販の下痢止めや吐き気止めを飲むのは避け、必ず医療機関で診察を受けましょう。
妊娠高血圧症候群
妊娠20週以降から産後12週までに、高血圧がみられる状態を妊娠高血圧症候群と呼びます。
重症化すると、母体にはけいれん発作(子癇)や脳出血、肝臓や腎臓の機能障害などが、胎児には発育不全や常位胎盤早期剥離などのリスクが高まります。
この病気のサインの一つとして、みぞおちの痛み(心窩部痛)や吐き気が現れることがあります。
その他、急なむくみ、頭痛、目がチカチカするといった症状があれば、すぐに産婦人科に連絡し受診する必要があります。
急性虫垂炎(盲腸)
急性虫垂炎は、一般的に「盲腸」として知られる病気です。
初期症状としてみぞおちの痛みや吐き気が現れ、徐々にお腹の右下へと痛みが移動するのが特徴です。
しかし、妊娠中は子宮が大きくなることで虫垂の位置が通常とは異なるところへ移動するため、痛みの場所が典型的でなく診断が難しい場合があります。
放置すると腹膜炎などを起こし、母子ともに危険な状態になる可能性があるため、我慢できないほどの強い腹痛がある場合は、急性虫垂炎も疑って早めに受診することが重要です。
妊娠中の胃薬の服用について知っておきたいこと
セルフケアを試しても胃痛が改善せず、日常生活に支障をきたすほど辛い場合、胃薬の服用を考えたくなるかもしれません。
しかし、妊娠中の薬の服用は、胎児への影響を考慮して慎重に行う必要があります。
自己判断で市販薬を使用することは避けなければなりません。
ここでは、妊娠中の胃薬との付き合い方について、知っておくべき基本的なポイントを解説します。
自己判断での市販薬の服用は絶対に避ける
ドラッグストアなどで手軽に購入できる市販薬には、さまざまな成分が含まれています。
中には、妊娠中に服用すると胎児に影響を及ぼす可能性がある成分や、子宮の収縮を促してしまう成分が含まれている薬もあります。
たとえ妊娠前に常用していた胃薬であっても、妊娠中に安全であるとは限りません。
胃痛が辛くても、自己判断で市販薬を服用することは絶対に避けてください。
まずはかかりつけの産婦人科医に相談し、安全性を確認してもらうことが何よりも大切です。
産婦人科で相談すれば処方してもらえる薬もある
どうしても胃痛が我慢できない場合や、食事や睡眠が困難になっている場合は、産婦人科医に相談しましょう。
医師は、妊娠週数や症状の程度、母体と胎児の状態を総合的に判断し、妊娠中でも安全に服用できる薬を処方してくれます。
処方される薬には、胃酸の分泌を抑える薬(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害薬)、胃の粘膜を保護する薬、消化を助ける薬などがあります。
医師や薬剤師の指示通りに用法・用量を守って正しく服用すれば、辛い症状を安全に和らげることが可能です。
妊娠中期の胃痛に関するよくある質問
妊娠中期の胃痛について、多くの妊婦さんが共通の疑問や不安を抱えています。
ここでは、特に多く寄せられる質問に対して、簡潔にお答えします。
赤ちゃんへの影響や、痛みを和らげる寝姿勢、症状がいつまで続くのかといった、気になるポイントを確認していきましょう。
ただし、症状には個人差があるため、最終的な判断はかかりつけ医に相談することが大切です。
Q1.胃痛は赤ちゃんに何か影響がありますか?
妊娠中の生理的な変化による胃痛が、直接赤ちゃんの発育に影響を及ぼすことはほとんどありません。
ただし、痛みが強すぎて母親がストレスを感じ続けたり、食事がほとんど摂れずに栄養不足になったりすると、間接的に影響が出る可能性は考えられます。
痛みが続く場合や食事が摂れない場合は、我慢せずに産婦人科医に相談しましょう。
Q2.胃が痛いときは右向きと左向き、どちらで寝るのが楽ですか?
一般的に、体の左側を下にして横になると楽に感じることが多いです。
これは、胃の出口が体の右側にあるため、左向きに寝ることで消化がスムーズに進み、胃酸の逆流も起こりにくくなるためです。
ただし個人差があるため、自分が最も楽だと感じる姿勢で休むのが一番です。
クッションなどを使って、快適な姿勢を見つけてみてください。
Q3.この胃痛はいつまで続くことが多いですか?
妊娠中期の胃痛がいつまで続くかは個人差が大きく、一概には言えません。
子宮が大きくなるにつれて妊娠後期まで症状が続く人もいれば、体が慣れてきて和らぐ人もいます。
また、臨月になると赤ちゃんが骨盤内に下がるため、胃への圧迫が少し楽になり、症状が改善することもあります。
多くの場合は、出産すれば自然に解消されます。
まとめ
妊娠中期の胃痛は、大きくなる子宮やホルモンバランスの変化といった、妊娠に伴う生理的な原因で起こることがほとんどです。
多くの妊婦が経験する症状であり、過度に心配する必要はありません。
食事を小分けにしたり、消化の良いものを選んだり、食後の姿勢を工夫したりといったセルフケアで、症状を和らげることが可能です。
他の妊婦の体験談も参考になりますが、症状には個人差があります。
我慢できないほどの激痛や、発熱・出血などを伴う場合は、迷わずにかかりつけの産婦人科に相談してください。
自分の体のサインを見逃さず、適切に対処することが大切です。









